本プロジェクトの敷地は多摩川の河口近くにある。敷地裏を悠々と流れる多摩川には、多くの野鳥が飛び交い、亀が甲羅干しをする‥そのような風景が広がっていた。そして、対岸に視線を移すと飛行機が一定の間隔で羽田空港を飛び立っていく様子が見える。自然と人工、それぞれの風景がそれぞれの時間軸の中で活動している様子が一つの風景として重なり合う様子が印象的な敷地であった。
この研究所に勤務する社員は、研究の特性上、作業中は窓のない室内で過ごすことが多いと聞き、周囲に広がる自然に意識が向く仕掛けをランドスケープに込めることができないかと考えた。また、川沿いは遮るものがなく風が強く、植物にとっては過酷な場所であった。それに対する対策も必要であろうと考えた。まず、前者に対しては、構内誘導サインの言語メッセージや矢印に多摩川で生息する亀や野鳥を想起させるピクトグラムのようなデザインを追加。それらのサインを見た時に、思わずクスりと微笑んでしまうようなほっこりとした一瞬がもたらされることを期待している。後者に対しては、樹木をバラバラと植栽するといずれ風害で弱ってしまうことが想定されたため、防風林のように密に植栽しつつ、ある一定の規則性を有した風景を生み出せないかを検討した。具体的にはエゴノキの二列植栽の間隔を狭めて配植し、多摩川の土手の斜面を登っていくかのような植栽配置を行なった。これにより、アイレベルから見ると列植により視線が空へと誘導される効果が生まれている。一方、建物から俯瞰した時には、列植が多摩川を中心としたパースペクティブを強調している。このように敷地に散りばめられたささやかな仕掛けが、人と自然との繋がりをもたしてくれること期待している。
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名 称 川崎市某所研究所
所在地 神奈川県川崎市
用 途 研究所
設 計 建築:株式会社三菱地所設計
ランドスケープ :大林ランドスケープ設計事務所
施 工 株式会社竹中工務店
竣 工 2017年2月
内 容 基本設計、実施設計
写 真 FOTOTECA
掲載誌 新建築2018年9月号80P
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